末梢神経マニピュレーション
末梢神経マニピュレーション
商品の詳細
【商品概要】
神経に直接アプローチして、さまざまな症状を取り除くことができる末梢神経マニピュレーションの手法を詳しく紹介する。 このテクニックは、バラルD.O.、クロアビエD.O.の20年にわたる臨床研究により開発された。
【 目次 】
第1章 末梢神経系の解剖と生理
第2章 神経の機械的損傷
第3章 末梢神経系の機能病理
第4章 末相神経マニピュレーションの原則
第5章 頚神経叢とその分枝
第6章 腕神経叢とその分枝
第7章 腰神経叢とその分枝
第8章 仙骨神経叢とその分枝
第9章 付録・要点
著者 ジャン=ピエール・バラルD.O./アラン・クロアビエD.O.共著
判型 B5判/293頁 カラー
監訳者 科学新聞社出版局監訳
発行者 科学新聞社
発行年 2010年
神経をマニピュレーションするため、固有受容器を通して、骨、軟骨、筋腱、皮膚など、自律神経を通して、血管運動、内臓機能など、身体の隅々の組織までに影響する。適応症としては、神経痛、神経炎、神経麻痺、胸郭出口症候群、機械的な原因による神経疾患、むち打ち症、帯状疱疹後の痛み、関節の動きの制限、筋の短縮、血管運動障害などが挙げられる。
前半では、末梢神経の臨床特性について、解剖学・生理学・病理学の面から詳しく解説する。
後半では、各神経叢および末梢神経について、その検査と治療のテクニックを多くの写真とイラストを用いて説明する。
オステオパシーの治療者だけでなく、徒手療法家にとっても幅広い可能性を提供する本である。
はじめに〜
整骨師に「神経の乱れを治してもらった」とか、「神経を元気にしてもらった」などと、年配者が話すのを誰でも一度は聞いたことがあるだろう。確かにこっけいな言い草だが、笑い飛ばしてはいけない。むしろ、この種の療法に頼る人の体調が良くなっていることを素直に認めるべきだろう。
人体組織は、さまざまな手段を使って組織内部や周辺外部とコミュニケーションを取っている。どんな組織も信号を受けたり送ったりできるようにつくられている。脈管、結合組織、筋肉、内臓器官、脂質など、組織内のすべての細胞にこの伝達機能が備わっている。この人体組織のネットワークが緊急事態や危険に立ち向ったり、あるいは単に正常な状態を保ったりするためにすばやく対応できるのは、いったいどんな伝達媒体の働きによるのだろうか。内分泌系の反応は確かにすばやいが、電気信号や化学信号が交錯する神経系の比ではない。
神経系は、時速200キロメートルの速度で何百万、いや何十億という情報を脳に運んでいる。脳には毎秒百億以上の情報が集められると考える生理学者もいる。そしてどの情報も、それぞれの用途に応じて一時的に眠らせるべきか、活動させるべきかが分析される。忘れ去られる情報は1つとしてない。身体はすべてが一体であり、身体のどの部分もないがしろにしてはならないというのが、オステオパシーの基本理念である。
人間にとって、なくてはならない高度な機能を持つ神経があまり研究対象とされていないこと、また、実験的にでも、神経が受け取る多種多様のメッセージを調整する試みがされていないことをかねてから不思議に思っていた。われわれはかなり前から神経マニピュレーションのテクニックを使っており、多くの経験と観察を重ね、その優れた効果を客観的に判断している。
すでに前著『外傷性損傷のオステオパシー的アプローチ(Approche osteopathique du traumatisme)』(1997年)で、神経マニピュレーション、特に脊髄神経根へのマニピュレーション・テクニックをいくつか説明している。本書では、数年かかって開発し、練り上げ、選別してきた末梢神経マニピュレーションのテクニックを紹介する。神経は各組織から送られてくる情報を運搬する。神経にはまた、神経そのものを支配する感覚系やnervi nervorumと呼ばれる神経の神経がある。
神経の神経は固有受容感覚の中枢を乱す場合があり、われわれがマニピュレーションの作用を及ぼそうと試みてきたのは、まさにその中枢である。身体の自己矯正力を引き出せるのは主に固有受容感覚系の働きによるものである、とわれわれは確信している。神経自体が自らの運ぶ情報を乱したり、神経の感覚系を損ねたりして、メカニズムのトラブルの発生源となることもある。常に内因性または外因性の応力を受ける神経に対してわれわれがなすべきことは、神経内または神経外にかかり過ぎている緊張を見つけ、その緊張をほぐすことである。身体にはマニピュレーションによる刺激に敏感に反応する部位があるが、神経にも特別に強く反応する個所がある。
しかしマニピュレーションの効果が現れるのは、非常に明確な範囲、トラブルを抱える特定の地点に限られる。本書では、まず神経の解剖や生理、よく見られるさまざまな症状、いくつかの禁忌について述べ、次に、神経ごとのマニピュレーションについて説明する。医学書はとかく難解なものになりがちだが、本書は簡潔でわかりやすい内容になっている。図や写真を多用して、ムダのない説明をしているほか、重要な個所については、適宜、掘り下げた解説が加えてある。この本に託したメッセージがあなたの指先まできちんと届くことを心から願っている。われわれの技は手によるものであり、患者を苦しみから解放できるのは、この手なのだから。
本書では四肢と頭部の末梢神経のみを対象とし、頭部および胸部の神経は別著で取り上げる。オステオパシーは、開発当初の理念を維持しながら、その知識と治療方法が少しずつ拡大されてきた総合診療科目である。オステオパシーの基本となる骨関節系の治療に加えて、筋膜系、頭蓋仙骨系、内臓系の治療が加わり、そして今、神経の治療が新たに加わった。末梢神経は人体組織の中でもとりわけ複雑な構造をしているため、細心の注意と配慮をもって行う必要がある。末梢神経は人体組織内の重要な情報媒体である。体内の数々の神経走行路をどうか順調に旅してほしい!
著者紹介
ジャン=ピエール・バラル
ヨーロッパ・オステオパシー・スクール卒業。パリ北大学医学部修了。オステオパスD.O.として臨床および教育の場で豊富な経験を持つ。クロワビエと共同で治療法を開発。優れた著書多数。知識と治療法において世界的に高い評価を受ける。
アラン・クロワビエ
A.T.スティル・アカデミー修了。オステオパスD.O.として治療活動を続けるかたわら、フランス・オステオパシー大学などで講義を担当。バラルと協力して治療法の開発やカリキュラム編成、著作活動を行う。実績が高く評価されている。